こんにちは、Antoineです。
ワインの説明でよく見かける「フルボディ」「ミディアムボディ」「ライトボディ」という言葉。
なんとなく「濃い」「普通」「軽い」という意味だと思っている方が多いのではないでしょうか?
実は、「ボディ」という概念は、科学的に説明できる**のです。
今日は、この「ボディ」の正体を、化学的・物理的な視点から解き明かしていきます。
「ボディ」とは何か?
ワインの「ボディ」を一言で定義すると:
「口の中で感じるワインの重量感・テクスチャー」
です。
水を口に含んだ時と、牛乳を口に含んだ時では、明らかに「重さ」が違いますよね?
ワインのボディも同じです。口の中で感じる「密度」や「粘性」の違いを表現した言葉なのです。
ボディを決める4つの要素
ワインのボディは、主に以下の4つの要素によって決まります。
1. アルコール度数
最も影響が大きい要素です。
アルコール(エタノール)は水より粘性が高いため、アルコール度数が高いワインほど「重く」感じます。
| ボディ | アルコール度数の目安 |
|---|---|
| ライトボディ | 11%以下 |
| ミディアムボディ | 11.5〜13.5% |
| フルボディ | 14%以上 |
グラスを回した時、内壁を伝って落ちる「涙」(ワインの脚)が多く、ゆっくり落ちるワインほど、アルコール度数が高い傾向にあります。
2. タンニン
タンニンは、ブドウの果皮・種・茎から抽出される渋み成分です。
タンニンが多いワインは、口の中の粘膜に結合し、収斂作用 (しゅうれんさよう) を引き起こします。これが「渋み」であり、同時に「厚み」「骨格」として感じられます。
- タンニン多い → 重厚感、骨格がしっかり → フルボディ傾向
- タンニン少ない → 滑らか、軽やか → ライトボディ傾向
3. 残糖(ざんとう)
発酵しきれずにワインに残った糖分を「残糖」と言います。
糖分は溶液の粘性を高めるため、甘口ワインは辛口ワインより「重く」感じます。
ただし、辛口ワインでは残糖はごくわずか(数g/L程度)なので、影響は限定的です。
4. エキス分(抽出物)
ワインに溶け込んだ様々な成分の総量を「エキス分」と呼びます。
- ミネラル
- グリセリン
- 有機酸
- フェノール類
これらが多いほど、ワインは複雑で「密度が高い」印象になります。
科学的に見る「ボディの正体」
粘性の違い
ボディの違いは、物理的には粘性 (ねんせい) の違いとして測定できます。
水の粘性を1とすると:
- ライトボディワイン: 約1.3〜1.5
- フルボディワイン: 約1.6〜2.0
この差が、口の中で「重さ」として感じられるのです。
密度の違い
アルコール度数が高いほど、実はワインの密度は軽くなります (アルコールは水より軽い)。
しかし、私たちが感じる「重さ」は物理的な密度ではなく、粘性と口腔内での刺激の総合的な印象です。
高アルコールのワインは、喉を通る時の温感も「重さ」として認識されます。
ボディの種類と代表的なワイン
ライトボディ
- 特徴: 軽やか、フレッシュ、すいすい飲める
- アルコール度数: 11%以下が多い
- 代表的なワイン:
- ドイツ・リースリング(白)
- ボージョレ・ヌーヴォー(赤)
- ヴィーニョ・ヴェルデ(ポルトガル白)
- モスカート・ダスティ(甘口微発泡)
ミディアムボディ
- 特徴: バランスが良い、食事に合わせやすい
- アルコール度数: 11.5〜13.5%
- 代表的なワイン:
- ブルゴーニュ・ピノ・ノワール(赤)
- キャンティ(イタリア赤)
- ソーヴィニヨン・ブラン(白)
- シャンパン(泡)
フルボディ
- 特徴: 濃厚、力強い、余韻が長い
- アルコール度数: 14%以上が多い
- 代表的なワイン:
- ナパ・バレー・カベルネ・ソーヴィニヨン(赤)
- バローロ(イタリア赤)
- シャトーヌフ・デュ・パプ(ローヌ赤)
- オーストラリア・シラーズ(赤)
- 樽熟成シャルドネ(白)
ボディと料理のペアリング
ワインのボディは、料理との相性を考える上で重要な指標です。
基本原則:「重さを合わせる」
- ライトボディのワイン → 軽い料理(サラダ、魚介、前菜)
- ミディアムボディのワイン → 中程度の料理(鶏肉、パスタ、和食)
- フルボディのワイン → 重い料理(牛肉、ジビエ、濃厚なチーズ)
重いワインに軽い料理を合わせると、ワインが料理を圧倒してしまいます。 軽いワインに重い料理を合わせると、ワインが物足りなく感じます。
具体例
| ボディ | おすすめ料理 |
|---|---|
| ライトボディ | 刺身、カルパッチョ、グリーンサラダ、白身魚のムニエル |
| ミディアムボディ | ローストチキン、トマトパスタ、焼き鳥、豚の生姜焼き |
| フルボディ | ステーキ、ビーフシチュー、BBQ、熟成チーズ |
よくある誤解
「フルボディ = 高品質」ではない
最もよくある誤解です。
ボディはあくまでスタイルの違いであり、品質の指標ではありません。
繊細で複雑なブルゴーニュのピノ・ノワール(ミディアムボディ)と、力強いナパのカベルネ(フルボディ)。どちらが優れているかではなく、どちらが好みか、どんな場面に合うかで選ぶべきです。
「フルボディ = 渋い」ではない
タンニンが多いと渋みを感じやすいですが、フルボディ=渋いとは限りません。
例えば、樽熟成した白ワイン(シャルドネなど)は、タンニンがほとんどないのにフルボディです。
アルコール度数の高さと樽由来の厚みがボディを形成しているのです。
「赤ワイン = フルボディ」ではない
ボージョレ・ヌーヴォーやブルゴーニュのピノ・ノワールは、赤ワインでもライト〜ミディアムボディです。
一方、樽熟成した高級シャルドネは白ワインでもフルボディになります。
色ではなく、アルコール度数とタンニン量で判断しましょう。
ボディを見分けるコツ
ラベルから推測する
- アルコール度数をチェック: 14%以上ならフルボディの可能性大
- ブドウ品種をチェック: カベルネ、シラー、ジンファンデルはフルボディ傾向
- 産地をチェック: 温暖な産地(カリフォルニア、オーストラリア)はフルボディ傾向
試飲で確認する
- グラスの涙を見る: 涙が多く、ゆっくり落ちるほどフルボディ傾向
- 口に含む: 舌の上での「重さ」を感じる
- 飲み込んだ後: 余韻が長いほどフルボディ傾向
まとめ
ワインの「ボディ」を一言でまとめると:
「アルコール度数、タンニン、残糖、エキス分が作り出す、口の中での重量感」
です。
| 要素 | フルボディへの影響 |
|---|---|
| アルコール度数 | 高い → 重い |
| タンニン | 多い → 重い |
| 残糖 | 多い → 重い |
| エキス分 | 多い → 重い |
「フルボディ」「ライトボディ」という言葉が出てきたら、この記事を思い出してください。科学的な背景が分かると、ワイン選びがもっと楽しくなりますよ。
À bientôt!🍷
Antoine Renaud(アントワーヌ・ルノー) フランス・リヨン出身のソムリエ 京都在住3年目、日本文化を学び中
