こんにちは、Antoineです。
ワインを選ぶ時、「1級」「グラン・クリュ」「DOCG」といった言葉を目にしたことはありませんか?
これらはすべてワインの格付けに関する用語です。
しかし、同じ「1級」でもボルドーとブルゴーニュでは意味が全く違う。フランスとイタリアでは制度そのものが違う。
今日は、この複雑なワイン格付けの世界を、歴史と仕組みから整理していきます。
なぜ格付けが必要なのか?
格付け制度が生まれた背景には、2つの理由があります。
1. 品質の保証
消費者が安心してワインを選べるよう、一定の基準を満たしたワインにお墨付きを与える仕組みです。
2. 産地の保護
特定の地域で造られた「本物」のワインと、他地域で造られた模倣品を区別するためです。
例えば、「シャンパン」はシャンパーニュ地方で造られたスパークリングワインだけが名乗れる名称。これも格付け制度の一種です。
フランスの格付け制度
フランスには、大きく分けて3つの格付けシステムが存在します。
1. AOC(原産地呼称統制)フランス全土に適用される基本制度**です。
AOC(Appellation d’Origine Contrôlée)は、特定の産地で、決められた製法・ブドウ品種を使って造られたワインにのみ与えられる認証です。
| 階層 | 説明 | 例 |
|---|---|---|
| 地域名AOC | 広い地域 | ボルドーAOC |
| 地区名AOC | 地域内の特定地区 | メドックAOC |
| 村名AOC | 特定の村 | ポイヤックAOC |
| 畑名AOC | 特定の畑 | シャトー・ラトゥール |
ピラミッドの上に行くほど、規制が厳しく、品質が高いとされます。
2. ボルドー1855年格付け
1855年のパリ万博のために作られた、世界初の公式格付けです。
ナポレオン3世の命令により、ボルドーのワイン商組合が、当時の取引価格を基準にシャトー(生産者)をランク付けしました。
メドック格付け(赤ワイン)
| 等級 | シャトー数 | 代表的なシャトー |
|---|---|---|
| 1級 (プルミエ・グラン・クリュ・クラッセ) | 5 | ラフィット、ラトゥール、マルゴー、ムートン、オー・ブリオン |
| 2級 | 14 | レオヴィル・ラス・カーズ、ピション・ロングヴィル |
| 3級 | 14 | パルメ、ラグランジュ |
| 4級 | 10 | タルボ、サン・ピエール |
| 5級 | 18 | ランシュ・バージュ、ポンテ・カネ |
驚くべきことに、この格付けは170年経った今もほぼ変わっていません。
唯一の例外は1973年、シャトー・ムートン・ロートシルトが2級から1級に昇格したことだけです。
ソーテルヌ格付け(甘口白ワイン)
| 等級 | 代表的なシャトー |
|---|---|
| 特1級 | シャトー・ディケム(唯一の特1級) |
| 1級 | リューセック、ラ・トゥール・ブランシュ |
| 2級 | ドワジー・デーヌ |
3. ブルゴーニュの格付け
ブルゴーニュでは、畑 (クリマ)そのもの**を格付けします。
これはボルドーとの最大の違いです。ボルドーが「誰が造るか(シャトー)」を重視するのに対し、ブルゴーニュは「どこで造るか(畑)」を重視するのです。
| 等級 | 説明 | 全体の割合 |
|---|---|---|
| グラン・クリュ (特級) | 最高の畑。33畑のみ | 約1.5% |
| プルミエ・クリュ (1級) | 優良な畑 | 約10% |
| 村名 | 村のブドウで造ったワイン | 約35% |
| 地方名 | 広域のブドウで造ったワイン | 約53% |
代表的なグラン・クリュ
- ロマネ・コンティ: 最も有名で高価な畑
- シャンベルタン: ナポレオンが愛した畑
- モンラッシェ: 白ワインの最高峰
- クロ・ド・ヴージョ: シトー派修道院が開いた歴史ある畑
イタリアの格付け制度
イタリアにも、フランスのAOCに相当する制度があります。
| 等級 | 説明 | 規制の厳しさ |
|---|---|---|
| DOCG | 統制保証原産地呼称。最高ランク | ★★★★★ |
| DOC | 統制原産地呼称。高品質 | ★★★★ |
| IGT | 地理的表示。地域性を示す | ★★★ |
| Vino | テーブルワイン | ★ |
代表的なDOCGワイン
- バローロ: 「ワインの王、王のワイン」
- バルバレスコ: バローロの弟分
- ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ: トスカーナの至宝
- キャンティ・クラシコ: トスカーナの代表格
スペインの格付け制度
スペインは熟成期間も格付けに含まれるのが特徴です。
| 等級 | 熟成期間 |
|---|---|
| グラン・レセルバ | 樽24ヶ月以上+瓶36ヶ月以上 |
| レセルバ | 樽12ヶ月以上+瓶24ヶ月以上 |
| クリアンサ | 樽6ヶ月以上+瓶12ヶ月以上 |
| ホーベン | 熟成なし |
産地の格付けとしては、DOCa (Denominación de Origen Calificada) が最高ランク。リオハとプリオラートの2つだけが認定されています。
格付けの限界と注意点
1. 格付けは「過去の評価」
ボルドー1855年格付けは170年前のもの。当時5級だったシャトーが、今では2級レベルの品質を持つこともあります。
逆に、名声に胡坐をかいて品質が落ちたシャトーもあります。
2. 格付け外の優良ワイン
格付けに入っていなくても、素晴らしいワインはたくさんあります。
- ボルドーのクリュ・ブルジョワ: 格付け外だが高品質
- スーパートスカーナ: あえて格付けを無視した革新的ワイン
- ヴァン・ド・ガレージ: 小規模生産の高品質ワイン
3. 価格への影響
格付けは価格に大きく影響します。同じ品質でも、格付けがあるワインは高くなる傾向があります。
賢い消費者は、格付けを参考にしつつも、実際の味わいで判断することが大切です。
格付けを読み解くコツ
ボルドーワインの場合
- ラベルに「Grand Cru Classé」があれば1855年格付けシャトー
- 「1er」「2eme」などの数字で等級が分かる
- 格付け外でも「Cru Bourgeois」は品質の目安
ブルゴーニュワインの場合
- ラベル最上部に「Grand Cru」とあれば特級畑
- 「1er Cru」は1級畑
- 畑名がなければ村名または地方名ワイン
イタリアワインの場合
- 首にピンク色の帯があればDOCG
- ラベルに「Riserva」があれば長期熟成品
- 「Classico」は伝統的な中心地区産
まとめ
ワインの格付けを理解するポイント:
| 国 | 格付けの対象 | 最高ランク |
|---|---|---|
| フランス (ボルドー) | シャトー(生産者) | 1級シャトー |
| フランス (ブルゴーニュ) | 畑(クリマ) | グラン・クリュ |
| イタリア | 産地 | DOCG |
| スペイン | 産地+熟成期間 | DOCa + グラン・レセルバ |
格付けは品質を知る目安にはなりますが、絶対的な基準ではありません。
最終的には、自分の舌で判断することが一番大切です。格付けの知識を武器に、ワイン選びをもっと楽しんでください。
À bientôt!🍷
Antoine Renaud(アントワーヌ・ルノー) フランス・リヨン出身のソムリエ 京都在住3年目、日本文化を学び中
